映画評:「戦略大作戦」〜英雄の考察。

 
 
 舞台は、ノルマンディー上陸作戦で勝敗の帰趨も決したヨーロッパ戦線。クリント・イーストウッド演じるケリーは、ドイツ軍将校から大量の金がドイツ軍占領地に隠されているという情報を手に入れた。彼は、癖のある仲間たちと共に、三日間の休暇を利用して、「私的に」強奪するために敵陣深くに、ドンパチ進攻する。命令ではなく、自由意志で進軍するところに、新鮮な爽快感のある戦争映画である。


 まずは、コメディ映画である。
 蔓延する厭戦気分が、笑いを交えて提示される。自軍の誤爆に対して、テリー・サヴァラス演じるジョー軍曹の交信場面。


>「お前が砲撃しているのは、おれたちの陣地だ!」
>・・・
>「聞こえない?聞こえないだろうよ。
>お前のところで発射して、ここで爆発してるんだからな」


 また、別の場面。ケリーが見本の金の延べ棒を手にして、砲撃部隊、補給部隊を籠絡するときの不自然な黄金のきらめき、デフォルメされた音楽。思わず「越後屋、お主も悪よのお」という時代劇の定番風景が思い出される。笑いの勘所は、日本もアメリカも違わないものだと、ニヤリとしてしまう。
 私が、字面に起こすと、果てしなくつまらなく感じられ、がっかりなのだが、何回観ても、笑い所が分かっていても笑ってしまう映画なのである。部屋で独り寂しく鑑賞していても、独り大笑いしてしまうほどの面白さなのである。


 ところで、この映画。笑ってばかりの映画ではないのである。笑いというオブラートに包まれているが、実は強いメッセージが隠されているのである。なにか。
 原題に注目したい。「KELLY’S HEROES」である。ケリーの英雄たち。そう、メッセージは、「英雄とは、なにか?」なのである。


 ケリー、ジョーに続いて、もう一人の主役であるオッドボール(ドナルド・サザーランド)の登場場面。
>「皆がやみくもに突進して戦死するから、俺たちは予備に回っている。
>奴らが、そうさなあ、パリやニューヨークを脅かしたら、その時は戦おうと思ってな。グフ、グフフ」
 

 そして、ケリーが金を強奪しようと仲間をそそのかしているのを知ったとき、部隊を預かるジョーは言う。
>「俺は、お前たちをベルリンに連れて行かなければならない。できる限り無傷でな。
>生き残るコツが、分かるか?英雄になりたい奴以外は、なるべく顔を出さないことだ」


 英雄になるよりも、とにかく生き残ることの大切さ。この映画は、強く訴えているのである。勲章や昇進の前にやることがあるだろ?家族の待つ故郷に生きて帰ること。
 いくらでも重たく描くことも可能なテーマである。しかし、製作者たちは、軽やかな笑いでカラッと笑わせ、その幕間で照れながら、「見得を張ったり、カッコつける前に生きることだよ」とさりげなく主張しているのである。


 百聞は一見に如かず。
 笑うもよし。泣くもよし。一味違う戦争映画にどっぶりとはまってみよう。


p.s.
視聴覚メディアである映画。
絵もなく音もない文章で書くのは難しいです。
・・・はっきりいって言い訳です。全然、まとまっていないです。
この映画、大好きな映画なので、後日、手直しするかもしれませんが、すいません。