仕事の話2

  私の隣のおじさんが忙しい。手伝ってあげたいのだけど、「まあ、ちょっと待て!」という風な扱いをされる私である。おじさんは、立派な人だ。谷川岳一の倉沢のパイオニアである。第三スラブの先陣争いでは、ロッククライミングの教科書に出てくるような偉大な人である。最近では、過激な岩登りから遠ざかり、トライアスロンに身を投じているそうな。詳しくは語らないが、会社までの五六十キロを自転車で通っている(た)らしい。


  そんな立派な人なのだけど、事務仕事はあんまり得意ではないらしい。だが、穏やかで素敵な人だ。嵐の冬山では、もの凄い力を発揮しそうだ。私は、彼のような、物に動じない穏やかな人間になりたいと思う。パソコンをパソパソできるだけが、人間の軽重ではないと、本当に思っている。